子連れ登山の記録というと「楽しかった」「登れた」という話が多いですが、この記事は違います。
標準タイム3時間52分の山に、約7時間かかった話です。ルートを外れ、計画を急遽変更し、最後は寝てしまった4歳児を夫婦交代で担いで登りました。それでもこの日のことは、挑戦した20座の中でも特に濃い思い出になっています。
同じように「小さい子と里山に登りたい」と考えている方に、わが家の失敗と、そこからの判断をそのまま共有します。
Contents
ひろしま北里山キングとは
「ひろしま北里山キング」は、広島市安佐北区・安芸高田市・北広島町・安芸太田町の里山20座に登る認定制度です(現在はパート3が開催中。最新情報は公式サイトをご確認ください)。
わが家は2020年3月から2021年7月までの1年4ヶ月をかけて、当時6〜7歳の娘と3〜4歳の息子、家族4人でパート1の全20座を完走しました。堂床山(どうとこやま・安佐北区)は、その中で一番苦戦した山です。
堂床山は、里山キングでは隣の可部冠山とセットで2つ登ってようやく1座と数える「ペア山」です。普通なら縦走して一度で終わらせるコースですが、わが家は子連れ。無理をせず、2020年12月にまず可部冠山だけを登り(前編はこちら)、急登がキツいと評判の堂床山は年明けのこの日に持ち越しました。
子連れ実測データ(堂床山)
| 標高 | 859.6m |
|---|---|
| 登った日 | 2021年2月7日(日) |
| メンバー | パパ・ママ・娘(当時6歳)・息子(4歳になったばかり) |
| コース | 南原峡の登山者駐車場から。当初は西冠山経由の周回計画→途中でルート変更し、急登の直登コースへ |
| 標準コースタイム | 3時間52分 |
| 実際にかかった時間 | 約7時間(うち休憩 約1時間30分) |
| 距離/のぼり | 5.4km/745m |
登山口・駐車場・トイレ
| 登山口 | 南原峡キャンプ場(広島市安佐北区可部町上町屋) |
|---|---|
| 駐車場 | 南原峡の登山者駐車場。無料で、約10台停められます |
| トイレ | 登山者駐車場に水洗トイレあり(通年) |
里山の登山口には、駐車スペースが2〜3台しかなかったり、そもそも駐車場がなく路肩に停めるしかない山も珍しくありません。その点、堂床山は約10台ぶんの駐車場があり、しかも水洗トイレまである。子連れにはかなり恵まれた登山口です。トイレットペーパーは、念のため持っていくと安心です。
※ここに書いたのは2021年2月に登ったときの情報です。登山口までの林道は工事や通行止めで一部が閉鎖されることもあり、駐車場やトイレの状況も変わることがあります。お出かけ前に最新の登山記録などでご確認ください。
当日のタイムライン(約7時間の内訳)
| 9:15 | 登山者駐車場を出発。急登を避けるため西冠山経由の周回で計画 |
|---|---|
| 9:30頃 | いきなりの急坂や不明瞭な道をYAMAP地図と踏み跡を頼りに進む。子どもには歩きづらい道が続き、時間ばかり経過 |
| 10:30頃 | 気づかないうちにコースを外れ、隣のルートに入っていた |
| 10:42 | ルート間違いに気づき、立ち止まって夫婦で相談 |
| 10:47 | 計画変更を決断。石采の滝方面へ一旦下る |
| 11:00 | 石采の滝。見事な滝に、沈んだ気分が少し晴れる |
| 11:16 | 分岐から急登コースで登り直し開始 |
| 12:00 | 山頂はまだ先だが、お昼になったので登山道の脇で1時間弱の昼食休憩 |
| 13:40 | 山頂直前で息子が電池切れ。寝てしまい、夫婦交代で担いで登る |
| 14:10 | 堂床山 山頂。どうにかこうにか登頂 |
| 14:36 | 下山開始(下りも急登の道) |
| 16:20 | 駐車場に帰着。おつかれさまでした |
何を間違えて、どう立て直したか
失敗①:「急登回避」で選んだマイナールートが裏目に
事前の下調べでルートを決める際、一番メジャーなコース「堂床山への直登」は急登がキツいと分かっていたので、遠回りでも急登が少ない道の方が歩きやすいだろうと西冠山経由の周回ルートを選びました。ところが実際は、子どもには歩きづらい荒れた道が続き、ペースが上がらない。
「距離が長くても緩やかな道がいい」は、道が良い場合にしか成立しないと痛感しました。急登でも登山者がよく歩くメジャーなルートのほうが道も明瞭で、結局は子連れ向きです。
失敗②:焦っているときほど道を間違える
「このペースはまずいな」と内心焦って進むうちに、気づけば計画のルートを外れ、違う道へ進んでいました。焦りと道迷いはセットで来ます。GPS地図アプリ(わが家はYAMAP)でこまめに現在地を確認していたおかげで、大きく外れる前に気づけました。

立て直し:「行ける所まで行って、ダメなら諦める」
ルートを外れた地点で一旦停止し、夫婦で相談。このまま進んでも時間切れになりそうだったので、YAMAP地図を見ながら別ルートを再計画。一番確実な直登コースまで戻って登り直すことにしました。
道迷いに気付いた時、夫婦で相談して決めた事は、「時間的にも体力的にも登頂は無理かもしれないが、14時頃の登頂を目指して行ける所まで行って、もし無理そうなら諦めて引き返す」という撤退ラインでした。ゴールへの執着より、引き返す基準を先に決めたことで、気持ちが楽になりました。
ママの日記より
同じ日を、妻(YAMAPネーム・あおちゃんママ)はこう書いていました。
この先の距離や時間を考えて急遽コース変更‼️あえて、急登を登る道を選び、滝のある方へ下りて行き、看板を見つけて一安心😌 予定より時間がだいぶ遅れていたので、14時頃を目処に山頂に着けそうになかったら諦めよーねと決めて進みました。

この「◯時までに着かなかったら諦めよう」をその場で口に出して2人で共有したのが、この日の一番の判断だったと思います。決めていないと、焦りだけが積み上がって「もう少し、もう少し」と進んでしまう。時刻を先に決めておけば、引き返すのは失敗ではなく計画のうちになります。
そして、下った先で迎えてくれたのが石采の滝でした。落差のある見事な滝で、沈みかけていた気持ちが少し晴れました。計画が崩れたときほど、途中で立ち止まって景色を見る時間が効きます。

子どもたちの頑張り
登り直しの急登を、子どもたちはアスレチックのように楽しんで登ってくれました。冬の山で活躍したのが、お湯を入れたボトルを湯たんぽ代わりにする作戦。息子はこれでごきげんでした。

それでも山頂手前で娘は疲れ切り、息子は電池切れで夢の中。最後は夫婦で交代しながら眠った息子を担ぎ、「頑張れ!頑張れ!もう少し!」と声を掛け合いながら登り、14時10分。どうにかこうにか山頂に到着しました。
「よく頑張ったね!すごいね!しんどかったね!」と、家族で顔を見合わせた山頂でした。
ママの日記より
日記の中の「ネェネ」は娘、「あおちゃん」は息子のことです。
急登は確かに大変だったけど、最初の道よりはルートがはっきりしていて歩きやすかったです😁ネェネは大変な急登をよく頑張ってくれました😊あおちゃんもよく頑張って歩きました🎵

結果的に、遠回りに見えた「急登コースまで戻って登り直す」判断が正解で、急登のメジャールートが子どもには一番歩きやすい道でした。道がはっきりしていることは、傾斜がゆるいことより子連れには重要だと、この日はっきり学びました。
無理して山頂を目指すことの怖さ(日没・スタミナ切れ)
この日は結果的に16時20分に下山できましたが、一歩間違えればもっと危ない状況になっていたと思います。子連れ登山で「山頂まであと少しだから」と無理を続けることには、はっきりしたリスクがあります。
日没:暗くなると道がわからなくなる
特に冬は日が短く、16時を過ぎると山の中は一気に暗くなります。暗いと登山道の目印が見えづらくなり、明るければ迷わない場所でも道を外してしまいます。ヘッドライトがあっても、子どもを連れて暗い急な下りを進むのは危険です。道迷いは、そのまま遭難につながります。
スタミナ切れ:帰りの体力まで残しておく
登りで力を使い切ると、下山する体力が残りません。小さい子どもはとつぜん電池が切れて動けなくなり(この日は娘も疲れ切り、息子は眠り込んでしまいました)、抱っこや背負う場面が増えれば大人の消耗も一気に進みます。

登頂はゴールまでの中間地点。無事に駐車場へ戻るまでの体力を残して行動することが大切です。
その電池切れを防ぐのに効くのが、休憩と行動食を「計画的に、こまめに」とることです。子どもは疲れを自分から言い出しません。疲れきる前に休み、お腹が空く前に食べる。
堂床山のこの日も、湯たんぽ代わりの温かいボトルと行動食があったから、最後まで歩き切れました。
だから「引き返す基準」を先に決めておく
山頂を踏むことより、家族全員が無事に帰ることのほうが何倍も大切です。「◯時までに山頂に着かなければ引き返す」という撤退ラインを、疲れて判断が鈍る前に決めておく。これが、日没やスタミナ切れによる遭難を防ぐ一番の方法だと、この日あらためて感じました。
撤退ラインの決め方のコツは、「無事に帰るために間に合わせないといけない時刻」から逆算することです。堂床山の2月のこの日は、日暮れ前の16時頃までに下山できるよう逆算して、山頂のリミットを14時に決めました。基準は山によって変わります。たとえば富士山に登ったときは、五合目からの最終バスに間に合わせるため、山頂到着のリミットを12時に設定しました。
日没・最終バス・子どもの体力――その日いちばん外せない条件から逆算して、登り始める前に撤退ラインを決めておくと安心です。
この山から学んだ、子連れ登山の教訓
- 子連れはメジャーなルート一択。「緩やかだから」とマイナールートを選ぶと逆に消耗します
- 撤退ラインを先に決める。「◯時までに山頂に着かなければ引き返す」と決めておくと、焦りが減ります
- GPS地図アプリ(YAMAP、ヤマレコ等)でこまめに現在地確認。焦っているときほど道を外れます
- 冬は行動時間が短い。16時台の下山はギリギリでした。冬の挑戦は特に早出を
- 休憩と行動食は計画のうち。疲れきる前に休み、お腹が空く前に食べる
- 寝た子を担ぐ体力も計画のうち。4歳児+装備を担いで登る前提で、大人の体力にも余裕を
まとめ:一番苦戦した山は、一番の思い出になった
堂床山は20座の中で最も時間がかかり、最も反省と学びの多い山でした。家族で相談して、立て直して、全員で山頂に立てた経験は、順調に登れた山では得られないものでした。この経験はのちに登った富士山でのトラブル対応にも活かされたと思います。
これから子連れで挑戦する方は、どうかわが家の失敗を踏み台にしてください。


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